そんな恋ならしないほうがまし
パジャマ・パーティーの映画は、アイちゃんがタイトルだけで選んだレンタル・ソフト。
観終わった彼女は不満げでした。
「問題が解決していないんじゃない?」って。
主人公カップルに襲いかかるのは、宗教、人種、文化、習慣、世代・・・・・・の壁。社会や家族は二人を引き裂こうと躍起。迷い戸惑い、素直になれず、思いやりを忘れて衝突。だけど離れがたい恋人たちに、
「男がしっかりしろ!」って、ご立腹。「恋人より家族が大事なんてどうよ?」「そんな恋ならしないほうがまし!」
国というか世界を救って何もかも、ついでに恋も大団円って筋書きの恋ならしないほうがマシっていうなら肯けますが・・・・・・。
ケン・ローチ監督作品は初めて観ました。
労働者階級や第三世界からの移民たちの日常生活をリアルに描くイギリスの巨匠。・・・・・・などと紹介されるのですね。
その彼の「珠玉のラヴ・ストーリー」ですって。
二人の出会いは音楽室。音楽教師ロシーンは、生徒とコンクールの特訓中。そこへ飛び込んでくるカシム。課題曲が《Ae Fond Kiss》で、それが映画の原題です。そのことについては、軽く検索にかけると誰もが言及または引用しているので、ここでは、《きらきら星変奏曲》を取り上げましょうね。
あら?《きらきら星変奏曲》といえば、あの《きらきら星》ですね。ということは、あの話は単なる前座だったのね!
ロシーンが、カシムとその仲間に、別れた夫の所から自分の部屋へグランドピアノを運んでもらうシーンがあります。帰ろうとするカシムに聞こえてくる曲、それがロシーンが弾く《きらきら星変奏曲》つまり、フランスの歌《ああ、お母さん、あなたに申しましょう》による12の変奏曲(ハ長調)なのです。そしてエンド・クレジットにも使われる曲の一つでもあります。
ああ!
ママ、あなたに言うわ
・・・・・・・・・・・・
なんて甘いのかしら?
愛が心に忍び込むのは!
モーツァルトが、そんな恋の流行歌を変奏曲に仕立てたのは、
「恋ってヴァリエーション豊かなものだよ」っていいたかった・・・・・・わけでもなさそう・・・・・・・で、単なるウケ狙いのような気もします。
が。
《きらきら星》お歌つきを十八番としていたと思われるわたしは、今でも《きらきら星変奏曲》が好き。そのヴァリエが恋みたいだから。
右手と左手が追いかけっこしたり、交差したり、ある時は煌びやかに、ある時はかわいらしく、不協和音が顔を出すことも、時に短調、アダージョにアレグロ。拍子だって変わっちゃう。
一つの恋をとってもそれは良くも悪くも展開していくものだし、相手がかわって同じ轍を踏むように思えても・・・もちろん懲りない人間のすることですもの傾向ってものがあるでしょうけど・・・それは新たな Variationen 。
同じ相手との恋でも、・・・それは想像ではあるけれど・・・タイミングが違えば結末は違っていたかもしれないっていえるくらいに。「互いに想いあっている」という条件付きですがリピートする価値だってあると思います。
恋愛に結論やゴール、大団円なんてものがあったらかえってコワイでしょう? ハッピーエンドは一瞬のもので、それがリアル。ロシーンとカシムや彼らが抱える問題に決着がついたら、ケン・ローチ作品である意義がなくなっちゃう。
それでもヴァリアシオンは生まれていく・・・・・・そんな恋のお話。なのかも。
忍び込む愛が甘く、
零れ落ちる愛が苦くても。
恋のない人生なんて。
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