愛しのフェリックス
恋人が時々遠い目をして物思いにふける。
《わたしのことを考えているのではないのね・・・》
愛されているはずなのに、でも・・・? そんな時はどうしましょうか。
これ以上の幸せはない・・・そう思える恋の中にも影は必ずある。今ここにある幸せよりも過去や未来に幸せを求めるのが人間なら、小さな微笑をあなたに差し向けて見なかったことにしましょうか。
それとも。
好きなの・・・だから現在も未来も欲しいし、過去も知りたいの。あなたのすべてを知りたいの。
ナタリーは、打ち明け話が欲しかったのでしょうか。
・・・答えは ''Non'' 。あなたはナタリーに泣かれても、脅されても、命令されても、決して話してはならないのです。
そう。
あなたはナタリーを '' 愛して '' はいない。あなたが話を聞いてもらいたかっただけなのです。
現恋人に '' あなたの私への愛情が深まりますように '' そういって過去を語る・・・そんなふうに物語は始まりました。
フェリックスは本気で愛が深まると思っているのでしょうか? 本気でそう思っているなら、青い男です。現恋人を失いたくないなら、嘘でもいいから、
「誰よりも貴女を愛しています。ナタリー」っていうのが妥当な線です。
バルザックの『谷間の百合』です。(←これから読んでみる人はここから先は読まないほうがいいかも・・・)
一 二つの子供時代
二 初恋
・・・まで読んで
三 二人の女性
・・・のタイトルを見たところで本を閉じてみました。
何故そうするのか?
モルソフ夫人・・・というかアンリエットに感情移入しすぎました。最初は、ナタリー気分で彼の話を聞いていたのですが、気がつけばなりきりアンリエットでした。
このまま一息に最後まで読んだら何も書けなくなる・・・そう思いまして。
アンリエットはフェリックスが彼女を思うよりもより強く激しく彼を求めていたのだと思います。心の中の ''女''っていう魔物を押さえつけながら聖女や良き母(←あえて良妻と呼ぶのはやめてみました)でいるっていうのはどんな感じなのでしょう。狂うとか内臓からやられちゃうとか・・・心身ともに疲弊しそう・・・です。
それに、先が見えちゃう恋をするってどんなに酷いことなのかしら。先が読めなくって、相手の気持ちがわからず、自分の気持ちさえはっきりしない恋のほうが、精神衛生上、よほど楽な恋だと思います。はい。
わたし、死ぬのね?
今日や明日ではなく
けれど近い将来。
その時、何を考える?
馬鹿だった?
なにがなんでも手に入れておくべきだった?
それとも。
これでよかったの?
答えなんてないわね?
神様が
いえ
あなたが許してくれるなら
最期の時まで迷い続けるわたしが
これでよかったと思っているその瞬間に、灯火が消えますように・・・
ね。死人に口なしです。アンリエットに感情移入しちゃったら、感想なんて書けません。
さて、
'' 三 二人の女性 '' スタートさせてみましょうか。
冷却期間は十分すぎるほど置いたから、気分を入れ替えて、もう一度最初から。
そして、''三'' はアンリエットともうひとり、なんて名なのか存じ上げませんが、両方に感情移入して読んでみせましょう。二人の女性を融合させたような女性・・・それが、フェリックス、あなたの理想なのね?
・・・贅沢な男よね。でも、そういう男って実在するのです。ここ彼処に。ね。
オノレ・ド・バルザックの『谷間の百合』。何故だか・・・わたしにとっては・・・キツーイ物語のようです。素直に読むには辛すぎるストーリー。でも、大好きかも。恋愛達人度かなり高し・・・デス。
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コメント
みみさん、こんばんは!
先越されちゃいました。実は僕も記事にしようと思ったら書けなくて、仕方ないので読み返しているところなんです。
「・・・・最後まで読んだら書けなくなる・・・・」
確かにおっしゃるとおり。
童貞少年のピュアな妄想片思いなんて決め込んで読んでいたら痛い目に遭いましたよ。未経験な青年と貞淑な人妻という組み合わせのストーリーは、あほらしいほどイノセンスな恋か、やたら性愛に目覚めるか、どちらかが表現されるでしょう、普通は。しかしなんだかこの小説の様子は違う。フェリックスが野の花を摘むシーンでさえそのディテールから最もエロティシズムを感じる場面として描かれており、アンリエットの節度ある態度はオーガズムを引き延ばすことにも似た何か(男にはわからない)です。
「二人の女性」の章にバーンとご登場のダドレー夫人・・・・・・女も聖なるものは犯したくなるのでしょうか?溜まっていたものが堰をを切ったようにほとばしります。名言(迷言)も多数。ナタリーへの小説冒頭の手紙の意味もわかります。しばし官能のときをお楽しみくださいませ。
投稿: hyodo | 2005/08/31 10:00
フェリックスの不幸な生い立ちに、涙ポロポロ。母性を放棄したママって酷いわよねぇ・・・って、いるわよね、こんなママって。一緒に泣いてあげよう・・・って感じで読み始めたこの物語。
hyodo sama
こんばんは。
一種の天才が書いてるわけですから。一歩違えばプツ・・・って逝っちゃうような。
凡人にはついていけません・・・。ので、フライングしちゃいました。
こんなところ(?)で性的嗜好がバレちゃうのもなんですので詳しくは書かないけど、モルソフ婦人の節度ある態度が意味するものは、ある種(?)の殿方には「ええ?! そうなの?」で、すべてを否定されるようなものかも。説明してもわからないでしょうし。・・・ごく私的で、全部の女性に当てはまるとも思えませんけど。
まあ、無理に理解しあわないで、幸福な誤解の下、仲良くやっていく・・・のが男女の究極の理想かしら・・・とも思います。
''フェリックスが野の花を摘むシーン'' は ''最もエロティシズムを感じる場面'' でしたね。・・・しばし楽しみます。・・・今のうちに。
投稿: みみ | 2005/09/01 23:33